言いたいことがある

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対岸の彼女

 

角田光代さんの対岸の彼女を読んだ。

日曜日に図書館で借りた本だ。お母さんとご飯を行ってその帰りに本屋さんにより、角田光代さんの愛がなんだが読みたいんだと伝えると対岸の彼女もおすすめだよと教えてくれた。

昔から角田光代さんの小説が好きだったので、日曜日に図書館へ行って借りた。そして今日はスクールに行かなかったので2時間かけて読破した。

 

よかった。なんだか涙が止まらなかった。

読むのがしんどくなった、でもなぜしんどいのか、それは現実を映し出しているからだと思う。

私って、いったいいつまで私のまんまなんだろう。

その冒頭から既にもう私の心は揺り動かされてた。私もいつも思うからだ。私っていつまでこのままなんだろう?って。変わるきっかけを求めて行動はしてみるものの、結局考え方も性格も人の関わりを恐れているのも全部全部そのままで。小夜子が考えていたように、私も〇〇ちゃんだったら、という妄想をいまだにしてしまう。自由気ままで面白くて明るい〇〇だったらどんなに生きやすいんだろう、とか。

 

この小説に心を打たれたのは、やっぱり私にとって切っても切り離せない「人間関係」についてのテーマだったからかなと思う。

私は人と関わることを強く望んでいるけど、人から傷つけられたり嫌われるのが怖くて人と関わることを避けてしまうことが多い。そんな矛盾する心に疲れていた。人が好きだし、人が嫌いだから。誰もいない空間の1人は心地いいけれど、周りが楽しそうに話している空間で1人でいるのは気が気でない。好きか嫌いか、その感情は些細なことやすれ違いで好きにもなるし嫌いにもなる。嫌いが誰かに集中すればいじめにも発展する。難しい。難しいからこそ、めんどくさくて全てから逃げてしまいたくなる。でも結局、そんな時に助けてくれるのもやっぱり人なのだ。そんなことを思わせてくれる内容だった。

 

それぞれの登場人物の感情を考えてしまう。でも、考えたってそこに答えはない。登場人物に限らず、他人の考えや気持ちなんて全部分かるはずない。ナナコがどんな思いで日々明るく振る舞っていたのか?いやそもそも、明るく振る舞っていたわけではなくて心からそう思ってただけなのか。本心かどうかは分からない。でも、「帰りたくない」を繰り返した彼女が本当のナナコ…と思うけど、人間ってとにかく複雑でいろんな面を持ち合わせているからどの姿もナナコなんだと思う。ケラケラたのしく笑ってきれいなものしか見えてないように見えるナナコも、全てを投げ出したくなったナナコも、繕ってたというよりかはどっちの面もあった、と言う方がしっくりくるような気がする。

というのも、一言で人の性格なんて言い表されないと思う。私は細かいとこまで気になるタチだけど細かいとこまで気が回らないし、人と話すのは好きだけど嫌いだし、怒りを根に持つわりには本人前にするとケロっとしてしまうこともあるし、意外と矛盾点ばかりなのでは?と思う。

 

とにかくナナコとアオちんの2人のことを思うだけで涙が止まらなかった。2人でゲラゲラ笑ってるだけで、それだけでよかったのに、世の中は「それだけ」にさせてくれない。家庭の問題、学校の問題、いろんなことがのしかかってくる。ああそうだよなあ、学生のうちは自分で選択することができない。お父さんが運転するタクシーでナナコが降りた後にアオちんが言った「なんであたしたちはなんにも選ぶことができないんだろう」そのとおりだ。でもね、大人になっても、私みたいに何かに囚われてる人間は自由に選択することができない。

嫌だ嫌だと言いながら会社に通い、気を遣いながら上司のご機嫌を取り、少ない休みで部屋の掃除をしている。スクールに通っている。

でも心の中で思う。私は勉強すること努力すること働くことが何よりも嫌いだ。家で本や漫画やドラマや映画を見て泣いたり笑ったり心を動かされていたいと思う。大人なんだからそれを選ぶことができるのに、自分がストッパーをかけている。「特に何もスキルがないくせに若いうちから正社員の仕事を辞めてどうするの?なにもできないまま歳をとっていくのが怖くないの?」そうやって自分が聞いてくる。怖い。怖いです。だから仕事に行って上司の機嫌をとって何かできるようになるためにスクールに通っています。心と反対のことをしてて苦しいです。でも不安がどうしても拭えません。そんな返答をいつも自分にしてる。

 

自分の生き方、そこをすごく考えさせられた小説だった。どうやって生きていくか、どうやって人と付き合っていくか、結局正解は分からないが、対岸の彼女ではなぜ人は歳を重ねるのか?の問いに「新しい出会いを求めるため、そして自分の行きたい場所に自分の足で向かうため」(意訳)という答えを小夜子は出していた。私はまだ自分との葛藤に苦しんでいて結論は出せそうにないが、いつか腑に落ちる日が来ると信じたい。この道を選んでよかったんだと思えるようになりたいし、その道を選ぶ勇気も持てているようになりたい。ダメだと思う自分を認めて、楽になりたい。

 

とにかくむちゃくちゃいい本だった。本当に。アオちんがいじめがあったことをナナコちゃんに打ち明けた時に、「アオちんがはぶられても、あたしは絶対に味方だよ。みんなに無視されてもたったひとりでも話してくれたらなんもこわいもんないでしょ?」「いじめなんか怖くないよ、だってそこに大切なものはないし」って言葉、私がもしアオちんの立場だったら本当に救われてると思う。ひとりでもそんなことを言ってくれる人がいるっていう事実だけで、生きることができると思う。ただこの言葉を言ったナナコはものすごくいろんなことを背負ってるからこその言葉だったんだよなあ…そして何も知らないアオちんの「すっごいしあわせに生きてきた人でしょ」の残酷さったらないよな…。

 

最終的に2人は会わなかったけど、2人の中で過ごした日々っていうのは本当にかけがえのない胸に残る日々だったんだろうなあ。なんかすごく刹那的で切ないのがもう…ハァ…語彙力がなくて言葉にできない難しい。

 

結論生きるのって難しいよね。